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Market Spotlight:APACの2025年1-3月期デューデリジェンス・ベンチマーク
2025年06月26日 (最終更新 2025年07月28日) | ブログ
Market Spotlight:APACの2025年1-3月期デューデリジェンス・ベンチマーク
2025年初めのアジア太平洋地域のM&Aは、取引開始件数やデューデリジェンス期間に関してどのような結果になったでしょうか。
M&A活動に関して取引開始件数や成約件数、デューデリジェンス日数を調査したDatasite Forecasterの最新データによると、2025年1-3月期の新規取引開始件数は世界全体では前年同期比11%増でしたがAPACでは同15%増となり世界全体を4ポイント上回りました。

成約に至った取引の件数は世界全体で前年同期比4ポイント減少しました。APACのデューデリジェンスの結果はやや気になる値を示しています。APACのデューデリジェンスに要する日数が前年同期比73日の増加となった一方、世界全体のデューデリジェンス日数は前年同期比3日の増加でした。1-3月期は資産売却が前年同期比18%増と好調だった一方、資本調達は同7%減となりました。

DatasiteのAPAC1-3月期デューデリジェンス・スコアカードは取引傾向にスポットライトを当て、これをさらに同地域のセクター別、国別のディールメーキング状況に分類しています。
絶好調の日本、驚きの東南アジア
日本は、円安と投資家寄りの新たなコーポレート・ガバナンス環境によって盛り上がっています。Datasiteの最新レポート「APAC Deal Drivers」によると、日本はAPAC諸国の中で突出しており、国際的なプライベート・エクイティ・スポンサーの資金を取り込んでいます。2025年1-3月期のM&A総件数は前年同期比で若干減少したものの、取引総額は大幅に増加しました。
日本では1-3月期に15%の新規取引があり、成約率は前年同期比6ポイント上昇しました。この上昇幅はAPACで最高です。日本が株主価値の顕在化に重点を置いた政策を行っていることが質の高い取引の流れを促進しています。取引件数は発表ベースで前年同期比小幅減少し、5.7%減の788件でしたが、取引総額は前年同期比75.8%増の336億ドルとなりました。
東南アジアの1-3月期M&Aは軟調に推移し、147件、合計97億米ドルの取引が発表され、それぞれ前年同期比17.4%減、22.2%減となりました。しかし、DatasiteのForecasterによれば、東南アジアの取引開始件数は大幅に増えています。同地域の1-3月期新規取引件数は56%増と驚異的な伸びを示し、成約率は前年同期比1ポイント上昇しました。同地域のM&Aに関して他に良かった点は、デューデリジェンス日数が139日減少したことと、取引保留件数が2ポイント減少したことが挙げられます。

資本財・サービス業界とTMT(テクノロジー・メディア・通信)業界における取引開始と成約
Deal Drivers :APAC Q1 2025に掲載されたMergermarketの「売却企業」案件ヒートマップによると、2024年1-3月期にAPAC内で1,627社が売りに出されました。2025年1-3月期には前年同期比13%減の1,446社となりました。

大中華圏が566社を占め、今後のM&A活動の中心になることは明らかです。中国が国内自給率重視の姿勢を続けていることを反映して、資本財・化学(I&C)セクターの見込み案件が195件(APAC全体では324件)と他のセクターを引き離しています。
次いで、世界のAIリーダーたらんとする中国の巨大なデジタル経済を背景に、テクノロジー・メディア・通信(TMT)セクターが129件(APAC全体では294件)で続いています。
TMTセクターの成約件数が前年同期比6%増となり、I&Cセクターの新規取引開始件数は前年同期比6%増となりました。Forecasterレポートの注目すべきデータとして、TMT案件のデューデリジェンス期間が前年同期比117日短縮され、I&C案件のデューデリジェンス期間は同11日短縮されました。

米国の貿易関税の影響がAPAC経済を混乱させ続けているため、新規取引がどれくらい開始されるのか、またどのセクターや国で取引が成約に至るのかはまだ分かりません。
DatasiteのForecasterレポートとDeal Driversレポートで、世界と地域のM&A市場の動向を常に把握することができます。