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マーケット・スポットライト:中国、レアアース輸出規制を緩和
2025年11月19日 (最終更新 2025年12月02日) | ブログ
マーケット・スポットライト:中国、レアアース輸出規制を緩和
ハイライト:
- 中国のレアアース輸出政策の転換が世界のサプライチェーン戦略の見直しにつながります-規制緩和が重要鉱物へのアクセスと市場の安定にどのような影響を及ぼしつつあるかを探ります。
- APACのM&A動向からレアアースと特殊素材に関する戦略的な動きが見えてきます-2025年第3四半期をよく見ると、ディールメーカーは地域全体のレジリエンス(耐性)と成長力を優先しています。
- 政府と民間投資会社がレアアース供給確保に向けてパートナーシップを加速させます-官民協力がエネルギー、IT、防衛分野の未来を形成しつつある理由を明らかにします。
10月末に妥結した米中貿易交渉で中国がレアアース輸出の追加規制を停止することに同意し、世界中の市場に安堵感が広がりました。
レアアースは17種類の鉱物で構成され、地球の地殻全体にわたって存在しますが、採掘できるほど大きな鉱床はめったにありません。レアアースは、電気自動車や風力タービンに使用される磁石からLEDライト、スマートフォンのディスプレイ、ハイテク軍事衛星、ミサイル誘導システム、高度なジェットエンジンまであらゆるものの製造に使用される重要な資源です。
中国は世界のレアアース生産量の60%以上、同加工能力の92%以上を占め、米国との貿易合意が10月に成立する前には、レアアース輸出の厳格な規制を実施する準備を進めていました。輸出規制が実施されていれば、レアアースの供給に依存する電気自動車、再生可能エネルギー、家電、防衛などの産業に大きな影響が及んだはずです。
レアアースの戦略的重要性がM&Aを促進
米中合意はこれらの業界の投資家や事業会社にとって大きな安心材料となりましたが、それでも業界関係者はレアアースの供給を多様化する選択肢を引き続き検討しています。
M&Aや合弁事業は、レアアースの生産能力を強化しサプライチェーンを強固にする重要な戦略的手段としてすでに確立されています。
世界最大のレアアース生産国である中国はレアアース関連のディールを牽引してきました。中国のレアアース企業は、規模を拡大し、市場での地位を強化するためにM&Aに目を向けています。
例えば、中国の国有レアアース企業3社(中国五鉱集団公司、中国鋁(アルミ)業公司、贛州希土集団有限公司)は2021年12月末、合併して新会社「中国稀土集団」を設立すると発表しました。この取引により、3社は効率を高め、抽出・加工技術への投資を拡大し、市場シェアを高めることができました。
一方、他のアジア諸国もレアアースのインフラに対する投資を増やしています。 マレーシアはパハン州で1億4,200万ドルのレアアース磁石製造施設の構築を支援しており、オーストラリアのLynas Rare Earthsと韓国のJS Linkは別の磁石製造施設を構築する契約を締結しました。
オーストラリアのレアアース企業は、国境を越えた合弁事業取引やパートナーシップの締結に加え、同国内のレアアース市場に対する政府の多額の投資を見込んでいて、Arafura Rare EarthsやIluka Resourcesなどの地元のレアアース企業は政府からの融資や資金調達上の支援を得るとみられます。
APAC以外のレアアース企業も、レアアース鉱物へのアクセスを増やし国内の供給・加工能力を増強するために、積極的にM&Aに乗り出しています。
例えば、米国に上場するレアアース企業のクリティカル・メタルズは2024年夏、グリーンランドにあるレアアース鉱床Tanbreezの92.5%の持分を2億1,100万ドルで取得する契約を発表しました。一方、米国国内市場では、同国唯一のレアアース磁石総合メーカーMP Materialsが米国防総省からの4億ドルの出資と、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスによる10億ドルの融資枠設定を受けました。
サプライチェーンの強化:APACのM&A動向がレアアース・セクターを形成
ディール・ドライバー:APAC2025年第3四半期レポートによると、APAC全体のM&A活動は関税の混乱を受けて鎮静化しました。テクノロジー・メディア・通信(TMT)セクターがディール件数で首位に立ち、金融サービス・セクターがディール金額で顕著に伸びました。中国の財政支援策とインドの堅調なGDP成長率が底堅いディール環境をもたらし、また、東南アジアはサプライチェーン再構築の恩恵を受けました。特に、レアアースを含む資本財・化学品(I&C)セクターが依然として戦略的取引の中心となっていることは、この地域がサプライチェーンのレジリエンスと特殊素材に力を入れていることを示しています。
今後の展望
国家安全保障やサプライチェーンのリスクが政府・レアアース企業によるサプライチェーンや生産能力への投資を促進することから、2026年はレアアース関連ディールの活発化が予想されます。
これらの取引では政府が重要な役割を担い、戦略的官民パートナーシップや産業界との合弁事業を後押しし、民間部門でも、レアアースに特化した投資会社が持続的なディール活動が見込まれる分野で積極的な動きをみせると考えられます。