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マーケット・スポットライト:長引く中東危機がAPACのM&Aディールフローに与える影響

2026年04月08日 (最終更新 2026年05月18日) | ブログ

マーケット・スポットライト:長引く中東危機がAPACのM&Aディールフローに与える影響

ハイライト:

  • APACではエネルギー安全保障が最重要課題であり、中東以外で資源を確保するための重要な手段の一つとしてM&Aが活用されています。
  • 燃料価格と供給ショックが代替エネルギー探しの引き金となり、再生可能エネルギーのM&Aが加速しています。
  • イラン戦争の波及で中東のデータセンターが混乱する中、APACのデジタル・インフラ資産に注目が集まる可能性があります。

中東情勢が続く中、人道的、経済的、地域的な影響が強まり、不確実性が高まっています。こうした環境の変化は、グローバル・サプライチェーン、エネルギー市場、より広範な経済状況において、予測不可能性を増大させています。

このような困難な背景の中でも、中東と関係のあるアジア太平洋地域のディールメーカーは市場から撤退せず、契約条件の 再調整と再交渉を行っている、とMergermarketのレポートは報告しています。

厳しいニュースが続く中、この動きは、ディールメーカーが特に 石油・ガス、再生可能エネルギー、デジタル・インフラのような重要セクターにおいて、ディールを推進する余地がまだあることを示唆しています。

石油・ガス:業界再編の進展

2025年の ディールメイキングで大きな障害となったのは、1バレル当たり65米ドル前後で推移する原油価格の低迷でした。イラン紛争および世界の石油と天然ガスの約5分の1が通過するホルムズ海峡が実質的な封鎖状態になったことで状況は変化し、4月上旬にはブレント原油価格が110米ドルを超えました。

石油価格危機は、燃料に依存する東南アジアで特に深刻になっています当然のことながら、エネルギー安全保障は最重要課題であり、紛争地域外で資源を確保しようと各国が競う中で、M&Aを促進する可能性があります。

例えば、中国で2025年10月から始まった5カ年計画では、エネルギー安全保障と産業の高度化が優先されています。この取り組みによって、中国におけるM&Aが今後加速することが見込まれます。

APACの企業も、中東からの供給不足分を補うために、米国のエネルギー供給へのエクスポージャーを拡大する可能性があります。日本の三菱商事は今年1月、米国のシェール生産会社Aethonを 75億米ドルで買収する計画を発表し、こうした変化を示す明確な初期シグナルになりました。各国が石油の調達先を多様化するにつれて、アジアから米国へのインバウンド取引がさらに増える可能性があります。

また、液化天然ガス(LNG)におけるディールメイキングの機も熟した可能性があります。すでに昨年は、 米国におけるLNGのM&Aにとって重要な年になりましたが、今年はその勢いがAPACに移る見込みです。各国が電力の供給不足および地政学的リスクに関する懸念を軽減するため、LNG調達の長期契約を重視する姿勢を強めると見られるためです。

利回りの安定したLNG資産への投資を求める国有企業や民間資本がディールフローを促進する見込みです。ただし、バイサイドとセルサイドがリスクを再測定し、評価のギャップを埋めることが条件になります。

再生可能エネルギー:M&Aの次のターゲット

アジアの中東石油への依存は、戦争の中で浮き彫りになりました。しかし、石油危機は、一部で指摘されているような石炭回帰の時期と捉えるのではなく、 再生可能エネルギーへの協調的な推進によって、エネルギー計画の構造的なギャップを修正する機会として考えることができます。

この賭けは成功する可能性があります。米国とイスラエルによるイラン攻撃が2月下旬に始まって以来、中国の大手電池メーカーとエネルギー貯蔵技術企業の時価総額が 合計で700億米ドル以上増加しており、この分野の重要性が高まると投資家が予想していることが示唆されます。投資家の資金を呼び込めるかが鍵になりますが、適切な価格で適切な再生可能エネルギー目標を追求する意欲を持ち、資金力のある金融投資家や戦略的投資家は十分に存在します。

デジタル・インフラは堅調

再生可能エネルギーの成長は、APACにおけるデジタル・インフラの急速な加速を支えるためにも重要です。5Gネットワークへの移行、AIの台頭、データセンターの活況は、電力消費の急増を引き起こしており、電力網への圧力を和らげるために、より多くの再生可能エネルギー源が必要であることを改めて示しています。

中東情勢の緊迫化によって、デジタル・インフラ整備が頓挫する可能性は低いと思われます。しかし、すべての市場が同じようにうまくいくとは限りません。中東のAI インフラ・プロジェクトに何十億ドルもの資金を長年にわたり投入してきたテック企業は、紛争が拡大するにつれ、難しい問題に直面しています。アラブ首長国連邦とバーレーンのデータセンターはすでにイランの攻撃を受けています。

つまり、中東のデータセンターにおけるインバウンドのM&Aは地域の安定が戻るまで休止し、グローバルなハイパースケーラーは代わりにアジアの主要なデータセンターのハブに機会を求める可能性があります。

国際的投資会社であるKKRと、アジアを代表する通信技術グループであるSingtelが2月初旬にデータセンター・コロケーション・サービス・プロバイダーのST Telemedia Global Data Centresを 共同で買収したことは、グローバル・プライベート・エクイティ企業が東南アジアに潜在的な可能性を見出している明確な例になりました。この地域のデータセンター市場が成熟し、より多くの案件が登場するにつれ、その関心は高まり続けるでしょう。

これらのセクターにおけるM&Aの次の展開

機会は存在するものの、ディールメーカーは案件を選別し、価格の規律を示し、地政学的なボラティリティをディールの構造やモデリングに直接組み込む必要があります。

評価の厳格化、デューデリジェンスの強化、重大な悪影響変更条項の厳格化が標準となると思われます。しかし、紛争が長期化すれば、M&Aのプレイブックはより抜本的な見直しが必要になるでしょう。つまり、戦略的適合性とシナリオに基づく評価モデルを前面に打ち出すと同時に、ミッション・クリティカルなセクターにおけるディールフローを復活させることになります。

現在の地政学的ショックは、ディールメイキングの一時停止というより、資本の再配分を促しています。エネルギー安全保障、サプライチェーンの強靭性、デジタル・インフラの主権が、APACにおけるM&Aの次の展開を定義し、資金は地政学的な分断に耐えられる資産へ明確に流れ込むでしょう。

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