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マーケットスポットライト:アジアのPE業界のディールメーカーによるAIの選択的な活用

2026年06月18日 (最終更新 2026年07月06日) | ブログ

マーケットスポットライト:アジアのPE業界のディールメーカーによるAIの選択的な活用

ハイライト:

  • AIは現在、PE企業における価値創造の中核的な原動力となっており、デジタルツールがより高いリターンを牽引しています
  • サービス主導型の投資先企業では、ワークフローの自動化とテクノロジーの再構築を通じて変革が進められています
  • PE企業が投資先資産の刷新を進める一方で、自社内では慎重な姿勢を維持しているため、AIの導入格差が拡大しています

AIの急速な成長は、PE業界の戦略をさまざまな面で変えつつあります。おそらく最大の影響は、PE企業がAIを活用して、投資先企業の価値創造を促進している点にあるでしょう。

その変化は数字にも表れています。 Boston Consulting Groupが100人のシニアPE投資家を対象に最近実施した調査によると、回答者の57%が「デジタル戦略は価値創造計画の中核をなす」と回答しています。さらに、PEの投資先企業で、各部門にわたって最先端のAI能力を構築した企業は、そうしなかった企業に比べて、投下資本利益率(ROIC)がほぼ2倍に達しています。

これは、テクノロジーやAIによる変革が、PE企業の価値創造計画に深く根付いていることを示しています。特に、エグジット環境が厳しい中で、PE企業が平均より長期間にわたり資産を保有するケースが増えていることが背景にあります。例えばアジア太平洋地域では、2025年に 保有期間が5年を超えた企業数が前年比で18%増加しています。PE企業は、当面の間、価値創造に一層注力しており、その際、AIの活用をますます重視しています。

 

AIトランスフォーメーション

この1年間に相次いで締結された提携や契約は、PE企業の今後の方向性を示しています。

5月下旬、プライベート・マーケット専門の投資会社 EQTは、Google Cloudとの新たな提携を発表し、300社を超える投資先企業におけるAI変革を加速させる方針を示しました。同月初めには、PE企業のBlackstoneが(Hellman & FriedmanおよびGoldman Sachsと共同で)、 Anthropicと提携し、中堅企業のAIトランスフォーメーションを加速するための新たなAIサービス会社を設立しました。

4月には、自動化や製品強化を通じて利益率の向上を図る「バイ・アンド・ビルド」戦略で知られる、ソフトウェアに特化した投資会社Thoma Bravoも Google Cloudとの戦略的提携を締結し、投資先のエンタープライズソフトウェア企業がAIトランスフォーメーションを加速できるよう支援しています。さらに、Thoma Bravoの投資先であるサイバーセキュリティ関連企業は、Google Cloudと提携し、AIを活用してセキュリティリスクを特定・軽減する取り組みを行う予定です。

これだけではありません。昨年6月、Vista Equity Partnersは 業界初となるエージェント型AIファクトリーを立ち上げました。これは、同社が投資するエンタープライズソフトウェア企業全体でエージェント型AIを拡大するためのプラットフォームです。その目的は、業務改革から市場参入支援に至るまで、あらゆる分野で最先端のAIツールを活用することにあります。

ソフトウェア投資会社Hgが注力しているのは、SaaSプロバイダーの垂直統合です。そこでは、AIを活用して税務、法務、コンプライアンスにおける定型的な業務プロセスを自動化しています。2025年11月、同社は Hgカタリストプログラムを開始しました。これは、Hgが費用を負担して開発者を投資先企業に派遣し、AI製品の開発を加速することでさらなる企業価値の創出を目指しています。

サービス分野では、成長投資を行う New Mountain Capitalが2025年5月、投資先企業3社を統合し、Smarter Technologiesを設立しました。これは、医療分野の収益サイクル管理の自動化に特化したAI主導のプラットフォームです。

別の事例では、従来型のビジネスプロセスアウトソーシング事業を買収したPE企業が、エージェント型サービスモデルを導入しています。その結果、正確性と効率性を向上させるとともに、コスト削減を実現しています。

AIが、PEの投資先企業にとって、ゲームチェンジャーになっていることは明らかです。一方で、PE各社は投資先企業に対してAIの導入を積極的に促しているものの、自社内でのAIの活用に関してはかなり保守的な姿勢をとっています。

 

AIのパラドックス

多くのPE企業では、ディールメーキングにおけるAIの活用はまだ限定的です。一部のPE企業は、投資や価値創造のアプローチにデジタル化技術を組み込んでいます。しかし、多くのPE企業は、日常業務でMicrosoft Copilotのようなセキュリティ水準が高いツールを標準的に利用するにとどまり、AIの潜在能力は他のユースケースにまで十分に活用されていません。

その結果、明らかな格差が生じており、PE各社は投資先企業の経営陣に対して、AI主導の変革を推進するよう求める一方で、自社内では比較的慎重な姿勢を維持しています。

この状況は変わるのでしょうか?いずれは、この格差は縮小する必要があるでしょう。AIが引受審査、リスク評価、業務デューデリジェンスに組み込まれるにつれ、PE企業はAIを取り入れ、自社システムを刷新する必要が出てくるでしょう。

先進的なPE企業は、AIトランスフォーメーションのプロセス開始を先延ばしせずに早期に着手しています。これは、資産を取得してからわずか数週間で、AIを活用した価値創造やエグジットの検討を開始するのと同じです。PE企業は、投資先企業の管理手法を自社に適用することで、常に時代の先を行くことができるでしょう。


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