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M&AとDX:APACにおけるビジネスチャンスと課題

2023年01月13日 | ブログ

M&AとDX:APACにおけるビジネスチャンスと課題

デジタル・プラットフォームはコロナ禍の恩恵を受け、その間、テクノロジーへの投資も堅調に推移しています。複雑なマクロ経済や地政学的な力が働く中、投資家はどのようにテクノロジー業界を乗り切ればよいのでしょうか。

先日、香港で開催されたMergermarket主催のM&Aフォーラムで、投資家や事業者が登壇したパネルディスカッションを実施いたしました。CE Innovation CapitalのパートナーであるXiaolin Zhengが、下記のパネリストと共にディスカッションし、APAC地域におけるデジタライゼーションと関連ビジネスチャンスについてそれぞれの見解を発表しました。

  • Evan Auyang, Group President, Animoca Brands
  • Peter Wong, Chief Technology Officer, Prenetics
  • Shengyan Fan, MD, M&A, China Everbright
  • Raj Shastri, Head of M&A, Circles.Life
  • Gaurav Nayak, Sales Director, Datasite

 

テクノロジー分野における、Web3.0とその他のチャンス

Web3.0の成長をインターネットの普及や2001年から2002年にかけてのドットコムブームと重ね合わせると、その指標はよく似ていることがわかります。35億人のゲーマーを含む50億人のインターネットユーザーは、Web3.0にとって巨大な市場であり、初期Web2.0時代と同じように、多くの変動性と懐疑性を感じています。当時の投資家は、「オフライン」と「オンライン」の定義をよくご存知だとは思いますが、現在、新しいハイテク企業でよく使われているのは、『オフチェーン』と『オンチェーン』という言葉です。Web3.0においては、ブロックチェーンによって実現されるアセットオーナーシップによって、集団が集まり、自分たちのアイデンティティを形成することが可能になります。ブロックチェーンは、有機的でコミュニティ主導の発見を可能にするため、これはWeb2.0からの大きなステップアップであり、この空間全体が注目されている重要な理由です。

投資家は、起業家、ブロックチェーン、これらの企業のアプリケーションをサポートし、ブロックチェーン技術にとらわれずにお互いをサポートすることで、エコシステムを構築することに重点を置いています。ファンドの投資対象は、今後3~4年でIPOを目指すレイトステージの企業です。

一方、ハードテクノロジーや産業分野への投資については、投資家は前向きで強気な姿勢を示しています。新興分野としては、DXとカーボンニュートラルという領域があり、これは下記2つの領域において最適化が必要です。

  • プロセスや品質の改善、生産性の向上、精度の向上で、機器やオペレーターがより良いデータポイントを検出、生成、分析し、それに応じてより良い情報に基づく意思決定を行うことを可能にします。
  • 排出削減を含むエネルギー効率や新しいエネルギー技術にも関心を持っています。

これは投資家にとって好ましいことで、投資に関する議論が運用サイドに向けられ、より長く、より徹底したデューデリジェンスプロセスが促されます。

フィリピン、タイ、インドネシアでは、電子ウォレットが徐々に生活にかかせないアプリとなりつつあり、より多くの消費者が電子ウォレットや携帯電話で決済を行っています。

東南アジアで注目を集めるフィンテック

東南アジアでは、フィンテックが注目の分野として急成長しています。投資や買収を通じてデジタルバンキング業界に動きが出てきています。フィリピン、シンガポール、マレーシアでは、デジタルバンキングのライセンスが広く認められ、大手決済プラットフォームや伝統的な消費者向け小売業者は、デジタルバンクと手を結んでいます。

電子ウォレット(電子マネー)は、東南アジアにおけるDXの中心的な存在になってきています。フィリピン、タイ、インドネシアでは、電子ウォレットが徐々に生活にかかせないアプリとなりつつあり、より多くの消費者が電子ウォレットや携帯電話で決済を行っています。電子商取引とインターネットの普及により、投資家は今後5年から10年の間に、2010年に中国が経験したようなフィンテック市場の爆発的な成長を期待しています。また、法令の遵守とインフラの未整備によるコストの増加が課題としてあげられますが、全体として、東南アジアにおけるフィンテック業界は、かなり有望であると思われます。

投資段階における最大の課題は、5~6年先の企業の成長軌道をいかに合理的に予測し、それに伴うリスクをどのように評価するかということです。

投資家にとってのDXと課題

現在のマクロ経済と政治的緊張という、好ましくない状況を考慮すると、投資環境には注意が必要です。インフレの進行、金利の上昇、採用市場の需要増加による企業価値の低下により、企業はキャッシュを確保したいと考えていることでしょう。

投資家にとって、それがWeb3.0であろうと、新たな変革をもたらす技術分野であろうと、企業の基本を評価するという、依然として古いルールが適用されることは明らかです。会社の運営方法、キャッシュフロー、収益性、市場戦略、チームの強さなど、すべてが重要な要素です。プライベート・エクイティ・ファームは、会社をどのように成長させるかに注目し、その専門知識を活用して、アーリーステージで強いコンセプトを持つビジネスからユニコーンになるまでの道のりを支援します。

投資段階における最大の課題は、5~6年先の企業の成長軌道をいかに合理的に予測し、それに伴うリスクをどのように評価するかということです。ここ数年は、規制リスク、政治的リスク、流動性危機、為替変動など、基本的なリスク要因が増え、全体的な分析が難しくなってきています。

そのため、投資家はセクターや業界という切り口を軽視し、代わりに、対象企業や投資先企業が外的要因を切り抜けるために十分な余力を持ちながら事業を継続できるよう、キャッシュフローや運転資本のニーズを管理するというような企業の基本能力に焦点を当てようとしているのです。

現在の経済シナリオにおいて、M&Aは特にハイテク分野で、より実行可能なエグジットとなります。

エグジットオプションとしてM&Aは望ましいか?

上場企業にとって、特に決算期において、資本市場を通じたエグジットオプションは引き続き有効です。しかし、昨年、PEファンドにおけるエグジットは、M&Aやトレードセールによるものが最も多くみられました。

現在の経済シナリオにおいて、M&Aは特にハイテク分野で、より実行可能なエグジットとなります。テクノロジー企業はより高みを目指しており、常に既存のサービスへの追加を考えています。今、特定のスキルセットを持ち、優れたチームを持つ企業に目を向ける良い機会です。評価額は1年前よりはるかに現実的なものとなっており、ベンチャーキャピタルやPEファンドが売却に前向きなのは当然といえるでしょう。

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