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エキスパート・スポットライト:APACの次のディールメーキングの波を乗り切るための洞察

2023年12月13日 | ブログ

エキスパート・スポットライト:APACの次のディールメーキングの波を乗り切るための洞察

2023年のアジア太平洋地域のディールメーキングは、金利上昇、規制当局の監視、経済の不確実性の影響を受けて、減少しています。ロンドン証券取引所グループのデータによると、2022年第3四半期に世界のM&A件数が10年ぶりの低水準を記録し、プライベート・エクイティの取引額が前年比で41%減少したことがこうした現象の背景として考えられます。 

特にAPACでは、中国の経済問題と地政学が投資家に懸念されています。米中間の緊張が一部の買収者に冷や水を浴びせ、中国のクロスボーダーM&Aは10年ぶりの低水準に達しました。また、外国企業の対中投資も減速しています。 

 

憂鬱なM&Aの先に見える明るい兆し

とはいえ、この地域全体に有効な機会が残っていないわけではありません。新たな厳しい環境に適応する意思のあるディールメーカーはそこに注目すべきです。東南アジアは依然として強い魅力を保っていますし、日本は、企業が中国から多角化するにつれて、ハイテクやプライベート・エクイティ・マネーを引き寄せています。インドも中国+1戦略の恩恵を受けているため、国内消費は堅調を維持しています。

先日、DatasiteとFinancial Timesは、APAC地域におけるM&A活動とトレンド、およびディールメーカーが2024年にディールメーキングを復活させるために活用できる戦略に関するウェビナーを共催しました。Financial Timesのアジア金融特派員ケイ・ウィギンズがモデレーターを務め、以下のM&A専門家の著名なパネルがディスカッションを行いました:

  • Miranda Zhao, Natixis CIB、アジア太平洋地域M&Aヘッド
  • Nozomi Oda,  Morrison Foerster、東京パートナー
  • Josie Ananto, Ernst & Young、アジア太平洋地域トランザクション・ストラテジー&エグゼキューション・リーダー
  • Desmond Chua, Datasite、アジア太平洋地域代表

 

新常識をナビゲート

現在、デューデリジェンスに要する日数の増加によって、取引完了までに平均で32日余計に時間がかかっています。また、資金調達条件が厳しくなったことで、買い手は取引の半分近くを完了前に手放しています。これは、金利上昇に加え、地政学的緊張の高まりによるものが原因と考えられます。クロスボーダー取引は現在、様々な規制のハードルをクリアするために、複雑さとコストの上昇に直面しています。 

米中摩擦により、企業はアジアへの戦略を見直す必要に迫られています。中国事業を全面的に売却するのではなく、特定の施設の移転、サプライチェーンの調整、取引保護の追加など、ほとんどの企業が「外科的なリスク回避」を行っています。

企業もプライベート・エクイティ・ファームも中国での存在感に節度を持たせているため、インドの魅力はますます高まっていると考えられます。半導体などの優先分野に対するインド政府の優遇策も実を結んでおり、世界の半導体企業は最近、インドへの130億米ドル超の投資を発表しています。

 

日本の上昇

パネリストは日本市場について強気に考えています。M&Aバンカーの手数料はAPACのほぼ全地域で下落していますが、日本はそのトレンドに逆らっています。通貨安のおかげで、グローバル企業はより良いバリュエーションと技術力を求めて日本を見直しつつあります。また、キャッシュリッチな日本企業に対する株主アクティビズムを促す現地の政策も、最近の公開・非公開ディールメーキングを活発化させているのです。

例えば、日本ではプライベート・エクイティ・ファームによる上場企業の非公開化ブームが起きています。米国以外の海外プライベート・エクイティ・ショップが、この1年、特に積極的に日本に進出していることも注目すべきポイントです。

コロナ禍後のホテル、リゾート、その他のインバウンドサービスに対する需要は、海外の不動産投資家にとって良い兆しだとも言えます。また、日本政府による新興企業への支援や海外VCによる資金調達も、テクノロジー案件の流れを後押ししています。

 

前途は多難

しかしながら、パネリストによれば、APACでの買収完了にはいくつかの障害が残っています。米中間の緊張が続いているため、複雑な交渉や体制を余儀なくされていることも懸念されます。

また、米国、台湾、インドなどで選挙が予定されており、2024年の展望はさらに不透明です。地政学的な不安定さは、結果が落ち着くまで取引を停滞させたり、買い手の信認を弱めたりする可能性があります。

インフレのピークが過ぎれば、取引への関心が戻ってくるはずです。また、2023年のM&A不況を通じても、アドバイザリー収入は健全な水準を維持しています。

今日のような市場の乱高下の中にあっても、人口動態やテクノロジーの導入といったアジア太平洋地域の構造的な原動力は、長期的なダイナミズムを示しています。賢明なエグゼクティブは、クライアントの準備が整った瞬間にディールを実行できるようにしたり、取引の機会を一箇所で把握・管理したりしたり、ディールリサーチのニーズをAIで強化したりすることで、パンデミック後の成長を把握するための動きを今も行っています。現在、かなりの不確実性があるにもかかわらず、パネリストたちは、安定が戻ればさらに花開く可能性のある緑の芽を見ています。しかし、これからの道をうまく進むには、忍耐力、創造力、地域理解が必要でしょう。

2024年のディールメーキングに弾力性を持たせるための戦略について詳しくお聞きになりたい方は、ウェビナーのアーカイブをご覧ください。パネリストが共有した洞察や、APAC全域の市場機会に関する聴衆の質問に対するパネリストの回答を、より深くご理解いただけます。

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