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エキスパート・スポットライト:デジタル時代のM&Aデューデリジェンス
2024年05月21日 | ブログ
エキスパート・スポットライト:デジタル時代のM&Aデューデリジェンス
目まぐるしいM&Aの世界では、取引は複雑かつ時間との勝負であるため、プロセスの効率化とリスク緩和のためにテクノロジーはいよいよ欠かせないツールとなってきています。最近ロンドンで開催された「Legal 500」カンファレンスでは、エキスパートらが特にデューデリジェンスにおいてテクノロジーの利用がどのように進化しているかを明らかにし、ディールメーカーにとっての課題とメリットの両方を示しました。
量より質
従来からデューデリジェンスは細心の注意を払いながら時間のかかる作業であり、いたるところにリスクをはらんでいました。しかし近年、デューデリジェンスの状況は変化してきています。市況や包括的なインテリジェンスに対する需要の高まりを受けて、スピードだけに焦点を当てるのではなく、品質を重視する傾向が顕著になってきています。
データは多くを語ります。Datasiteのようなプラットフォームにアップロードされるドキュメント量が大幅に増加していることは、プロジェクト数の増加と相まって、デューデリジェンスの範囲が拡大していることを強く示しています。買い手はより深いインサイトを求め、売り手からより多くの情報開示を必要としています。この変化は、ディールメイキングに速さよりも完全性を重視する、よりこだわりのあるアプローチを反映しています。
しかしなぜ変化したのでしょう?それには近年の市場ダイナミクスが大きく作用しています。2021年は低金利と低調なバリュエーションから利益を得ようとする熱狂的な動きがあったことが特徴的でしたが、その後はより慎重な環境へと変わっていきました。バイヤーの後悔と資金調達の検討は、リスクの最小化と価値の最大化に向けて努力することの大切さを示しています。
変革の起爆剤としてのVDRおよびAI
さて、M&Aの様相を変革する起爆剤、テクノロジーの登場です。特に重要情報の管理および共有に必要なセキュアで一元化されたプラットフォームを提供する仮想データルーム (VDR) は、大きく流れを変えるゲームチェンジャーとして登場しました。VDRを活用することで、ディールメーカーは連携を強化し、ワークフローを効率化し、デューデリジェンスプロセス全体でデータの整合性を確保できます。
人工知能 (AI) の統合では興奮も起こりましたが、同時に懸念も生まれました。テクノロジーが進化し続ける中、AIがデューデリジェンスプロセスに革命を起こす可能性は否定できません。しかしその可能性にはディールメーカーに対する多くの課題や検討事項も付きまといます。
AIは根本的には人間の能力を拡張する力があり、より深いインサイトとデューデリジェンスの効率化を可能にします。M&AプロセスにVDRを導入することによって、利害関係者が多くの質問をしたり、複雑な詳細を簡単に掘り下げたりできるようになることで、テクノロジーがいかに包括的な評価を容易にするかすでに示されています。Datasiteが最近実施した調査では、かなりのディールメーカーがAIによってM&A取引を最大50%加速できると考えていることが分かりました。このような楽観的な見方は、AIが取引の効率と成果に革新的な影響を与えうることを示しています。
しかし、AIの統合に課題がないわけではありません。このテクノロジーはまだ生まれたばかりであり、慎重な検討とトレーニングが必要です。データのプライバシーとセキュリティの確保は最優先事項であり、チームはAIテクノロジーの複雑さと取引プロセスへの影響に精通していなくてはなりません。さらに、膨大な量の問い合わせがプロセスを圧倒する可能性があり、情報過多と優先順位付けへの懸念を引き起こしています。
優れたデューデリジェンスの重要性の高まりから、仮想データルームやAIによる変革の可能性まで、テクノロジーは取引のあり方を変えつつあります。テクノロジーを戦略的イネーブラーとして採用することで、ディールメーカーはデジタル時代においてより大きな自信と成功をもって複雑なM&Aを進めることができます。