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エキスパート・スポットライト:2025年のAPAC地域でのM&Aにおける新興市場および分野を明らかに
2024年11月13日 | ブログ
エキスパート・スポットライト:2025年のAPAC地域でのM&Aにおける新興市場および分野を明らかに
APAC地域のM&A状況は今大きく変化しつつあります。かつてディールメイキングで圧倒的な強さを誇っていた中国は、経済的課題と厳しい規制措置によりその勢いを失いつつあります。
こうした変化は、インドと日本をこの地域におけるM&A活動の新たな中心地として台頭する方へと導いています。革新的な新興企業や拡大する消費者市場を擁するインドの技術主導型経済には投資家たちからの多額の資金が集まってきています。また日本では戦略的にアウトバウンド取引案件、特にテクノロジーとヘルスケア分野に重点を置いており、これによりクロスボーダー取引が急増しています。
Financial Times 紙はDatasiteと共同で、APAC地域におけるM&A活動の現状と今後の展望についてパネルディスカッションを開催しました。討論会はFinancial Times 紙のアジア金融特派員であるケイ・ウィギンズ氏がモデレーターを務め、有識者としてジャクリーン・チャン氏(Milbank LLP パートナー)、バリー・チェン氏(InterChina Partners マネージング・ディレクター兼担当パートナー)、アミット・タワニ氏(Nomura India マネージング・ディレクター兼IB責任者)、そしてデズモンド・チュア(Datasite APAC責任者)らが参加しました。
M&A活動において広がり続けるAPACと他地域との格差
PwCとLSEGによると、APAC地域のM&A活動は2024年上半期には32%減と大幅に減少しており、5%増であった世界全体とは対照的です。この低迷は主に景気減速、新規上場規制、地政学的緊張の影響を受けて、中国案件に対する投資家たちの関心が低下したことによるものです。取引金額はテクノロジー分野およびエネルギー分野での超大型案件が追い風となって、世界的、特に米州にて伸びています。上半期の米州は案件数こそ減少したものの取引総額は22%増加しました。
ディールメーカーの30%以上が、2025年のAPAC地域におけるM&A機会の大半は、事業分離、清算、カーブアウト、撤退、またはボルトオン買収にあるとしています。
「中国プラスワン」の恩恵を受ける新興市場
インドと日本はM&A活動の主要市場として台頭してきており、好調な経済実績を背景に投資家たちの関心はますます高まっています。さらに東南アジアでは特にデータセンターや再生可能エネルギー等の分野に注目が集まっています。これらの地域は中国に代わる魅力的な地域とされ、新たなディールメイキングの機会を提供しています。日本はインバウンド資本でかなりの恩恵を受けており、インドでは大量の取引案件が続いています。より広範囲でのAPAC地域における案件数は前年に比べ増加していますが、この増加に大きく貢献しているのが日本とインドです。
AIブームがテクノロジー、エネルギー、インフラ分野のディールメイキングを後押し
日本では消費者分野が特に活発であり、消費者分野とTMT(テクノロジー、メディア、通信)分野、特にテクノロジー領域でかなりの取引案件がありました。地政学的緊張が続く中で中国はテクノロジーの自給自足を目指しています。一方、AIブームを背景にデータセンターの需要は高まっており、再生可能エネルギーやインフラといった関連分野への投資も増加しています。
ウェビナーに参加したディールメーカーらは、2025年の案件数はAPAC地域のTMT分野が最多であろうとの意見で一致しています。
プライベート・エクイティのダイナミクス
プライベート・エクイティ企業はイグジットに注力しており、リターンを最大化するためしばしばデュアルトラック・プロセス(IPO(新規株式公開)と売却)を検討します。インドの資本市場は非常に盛んであり、デュアルトラック・プロセスの機会を提供しています。特にテクノロジー分野では新規資金調達のダウンラウンド傾向が目立ちます。この評価額の調整は買い手と売り手の期待を一致させる一助となっており、円滑に取引を成立させるのに重要です。
今後の展望
米国の選挙結果は、特に米中関係に関するM&A戦略に大きな影響を及ぼす要因となります。輸出分野のエクスポージャーが高いことから貿易政策や投資の流れが変わる可能性があり、不確実性をもたらしています。
さらにAPAC市場、特にプライベート・エクイティ企業との共同投資に対し湾岸諸国の金融機関の関心が高まっており、中東にとってAPAC地域の魅力が高まっていることは明らかです。討論会では、東南アジアは米国の選挙結果に関係なく、より広範な投資から恩恵を受けるだろうという意見で一致しています。
2025年に向け、M&A活動は戦略的再編成と分野別の機会に焦点を当てながら継続的に変化していくことが予想されます。評価額の再調整と新市場や新分野の出現が、APAC地域における今後のディールメイキングを促進すると予想されています。
ディールメーカーによれば、今後1年以内に取引案件を完了させるためには、評価額分析と交渉、現地市場に関する知識とコネクション、そしてクリエイティブなM&A取引の構築が重要になるとのことです。
2025年に向け、ディールメーカーは変化し続ける市場環境にあってもうまく乗り切っていけるよう、いかに適応していくかを学ばなくてはなりません。どんな種類の取引であれ、ディールメーカーは作業負荷を合理化し、プロセス効率を向上させるツールを使用して完璧な戦略を仕上げる必要があります。
ウェビナーでパネリストらがシェアしたディールメイキング戦略についてより理解を深めましょう。こちらからオンデマンドで録画をご覧いただけます。